要支援と要介護の違いって?
ケアマネの仕事をしていて、一番利用者さんへの説明に困るのが要支援と要介護の違いです。
ご存知のように、介護保険は要支援1・2、要介護1~5の介護度があり、介護度の順に重度の介護量が必要という目安になっています。
しかしながらこの要支援と要介護、単なる介護度が軽い重いというものではなく、制度としては似て非なるもの。介護サービスの利用方法も違います。
これがなかなか利用者さんにはご理解頂けず、苦労することも多々あります。
何がどう違うのか、簡単にわかりやすく説明していきたいと思います。
要介護
要介護1とは
要介護1の状態は日常生活に問題がなく、食事、入浴、排せつなど生活に必要な動作が可能です。身体・認知機能にも問題はありません。
しかし、立ち上がること、着替えること、掃除をすることなど若干の複雑な動作に支援を必要とすることがあります。
また、時折混乱したり理解力が低下してしまうことがあります。
要介護2とは
要介護2の状態は、日常生活を送ることが難しくなり、部分的な介助をスつ用途する状態です。
立ち上がりや歩行に支えが必要、食事や排せつには見守りが必要となります。
要介護3とは
要介護3の状態は常に他者のサポートが必要となります。
自力での立ち上がり及び歩行は困難であり、食事、排せつ、入浴には軽度の身体介助が必要となります。
また、認知機能の低下、軽度の認知症により日常生活が困難な状態です。
要介護4とは
要介護4の状態は自力での日常生活はほぼ不可能な状態です。食事、排せつ、入浴には全面的な介助が必要となり、身体機能としては姿勢を維持することが難しくなります。
また、要介護3と比較し、認知機能が著しく低下、認知症が悪化している状況です。
理解力や思考力が低下し、意思の疎通、コミュニケーションが困難になります。
要介護5とは
要介護5の状態とは、食事、排せつ、入浴などの日常生活において全面的な介助を要する状態です。自力で動くことが困難で寝たきりの状態となります。
また、意思疎通が不能となっていることが高く、介護者の負担も大きい状況です。
要支援
要支援1とは
要支援1は、介護が必要な度合いを示す「要介護度」のうち最も軽度な状態のことです。
食事や入浴、排せつなど日常生活における基本動作は自力で行えるものの、立ち座りなどの動作や買い物・掃除などの際に部分的な支援が必要となる状態です。
要支援2とは
要支援2は要支援1に次いで2番目に症状が軽い段階です。
立ち上がる際や両足で立つ際、歩く際などには手助けが必要になる場合があるほか、家事をしたり身だしなみを整えたりするときにも、一定の手助けが必要です。
要支援と要介護の違い
簡単に言うと、「要介護」とは、入浴、排泄、食事等の日常生活動作について常時介護を要すると見込まれる状態のことをいい、「要支援」とは、現在は介護の必要が無いものの、将来要介護状態になる恐れがあり、家事や日常生活に支援が必要な状態をいいます。
他に大きな違いがあるとすれば、受けられるサービスが異なること。
まずは要介護1~5の方の場合ですが、居宅介護支援事業所と契約を結び、その事業所のケアマネがケアプランを作成します。
訪問介護やデイサービス、ほとんどのサービスは、一回いくらというように計算され、利用しなければもちろん料金は発生しません。
おそらくこれが一般的に皆さまが理解されている介護保険の利用方法であると思います。
要支援1・2の場合、地域包括支援センターがケアプランを担当します。ですが、もちろん地域包括だけではたくさんいる要支援者全てのケアプランを作成することはできません。
そこで地域包括から委託を受けるという形で、居宅介護支援事業所のケアマネがケアプランを作成する場合があります。
ポイント1:契約・料金が複雑
この場合まずややこしいのが、居宅のケアマネが担当していても、利用者は地域包括と契約を結び、介護保険証の担当事業所の欄も地域包括の名前が記載されます。
そして地域包括と居宅の事業所は、別に委託契約を締結します。
ちなみにプラン料は要介護者の半分以下になり、書類も要介護者と全く違う形式になります。
さらには、地域包括から委託を受ける形ですので、プランの責任は地域包括が持つことになり、ケアプランの内容も包括の許可を得ないといけません。
こういった問題から、単価も安くて手間のかかる、要支援者のプランは受けません、という居宅介護支援事業所は増えてきています。
ポイント2:利用可能なサービスが変わる
さらに最も利用者を混乱させるのが、要介護の場合とは利用方法が変わるサービスがあるということ。
まず地域包括ケアシステムの推奨により、要支援者の訪問介護、通所介護は「基準緩和」「現行相当」に区別されます。
簡単にいいますと、基準緩和の方は専門的な介護が必要でない要支援者、現行相当はこの逆で、専門職がサービスを行わなくてはいけない要支援者が当てはまります。
これにより、訪問介護と通所介護は、基準緩和サービスと現行サービスが設けられているのです。
この2つのサービスは単価が違い、基準緩和の方が2割程度安く設定されています。
そのためだけでもないですが、基準緩和のサービスは行いませんという事業所がたくさんあり、それまでが要介護で要支援になった人の場合、今まで利用していたデイケアやヘルパー事業所が利用できなくなる事態も多くみられています。
ポイント3:サービス料金と回数
さらに、訪問介護と通所介護は月額包括性で、週一回利用で一ヶ月いくら、週二回でいくらと定められていて、利用回数が減っても支払う金額は変わりません。
そして一番クレームが多いのが通所介護の利用回数。一般的に、要支援1の方は週一回、要支援2の方は週に二回利用するように単価も設定されています。
これが、要支援2の方が週に二回も行きたくないから一回でいい、と言っても、料金は週二回設定の額から減ることはありません。
逆に、要支援1の方が週に二回行きたいと希望しても、ほとんどの場合はそれができません。
そして週三日以上行きたい、ということは叶わないのです。
事業所によってはこの辺り融通が効くところもあるにはありますが、現状はそうもいかないことがほとんどなので、要介護度の変更で今まで利用していた回数が変わることで、混乱される方が非常に多く、ケアマネとしても説明に苦労するところです。
まとめ
要介護度がほとんど変わらない人や、ヘルパー、デイケアを利用していない人はいいのですが、利用している上で更新などで要介護から要支援になられた場合、上記の法的な約束をなかなか理解されず、皆さん混乱したり怒り出されたりすることがとても多いです。
それをきちんとご納得いただくように説明するのがケアマネの仕事ではありますが、納得いかない気持ちもわかるなあというのが、日ごろの業務をしていくうえでの本音でもあります。