介護の仕事をしているとトラブルは定期的に起こります。やはり人間同士がかかわる仕事ですので、どうしてもトラブルは避けられないことがあります。
しかし大切なことはトラブルが起きた時にどのような対処をするのかということです。ここではご家族とトラブルが起きた時の対処方法を実際の体験談で説明していきます。
必ず歩かせてほしいと言ってくるご家族
私が施設の相談員をしていた時のことですが、無理難題の要望を言ってくるご家族に対して非常に悩んでいました。
そのご家族は母親のことを非常に献身的に介護をしてきましたが、在宅での介護は限界になってしまい母親を施設に入所する運びとなりました。
入所してからご家族は毎日施設に来ては、母親のお世話をして職員への要望も「おむつをこまめに替えてほしい」「もっと話かけてほしい」など強かったのです。職員も出来る範囲で対応していました。
そのおばあちゃんは入所当初は歩いていましたが、加齢とともに徐々に歩行状態が不安定になり転倒予防の為にも車いすで移動することが多くなりました。
しかしご家族からはそれが納得いかず「あれだけ歩けていたのになんで歩けなくなっているの!歩かせてください」と言ってくるようになりました。
最初は一日の内車いすを使う時間を決めて出来るだけ歩いてもらうようにしましたが、職員の見守りも必要ですし、何よりも本人が「歩きたくない」と言っているので、徐々にそれも難しくなってきました。
職員も何度も説明をしましたが聞く耳を持たない家族でしたので、徐々に職員と家族の溝は深くなっていきました。私はこのままではご家族の要望には添えないうえ、何かあった時に話し合いができないと考え医師との面談の場を設けました。
医師から歩くことは難しい、歩けない理由を医学的な観点から伝えてもらうことにしたのです。
ご家族は医師から話を聞くまでは、今まで歩けていたという一点張りの考えでしたが、その考えも変わりました。加齢によって身体機能が落ちるのは当然なことであり、無理に歩かせていると転倒などの危険も大きいとわかってくれるようになりました。
改めて私はご家族との面談の場を持って、話を聞くことにしました。
ご家族からは「母は昔本当に苦労をした人でした。そんな母が車いすになってだんだん年老いていくのが受け入れなかった、迷惑をおかけしました」と理解を得ることが出来たのです。
また、私自身もそういったご家族の思いも理解することができましたので、ご家族への対応も老いる母親への喪失感を配慮した対応で接することが出来たのです。
結果的に職員との溝も少なくなり、ご家族もそこまで細かく言うことはなくなりました。
言葉の裏の感情を知る
ご家族は様々な思いを持って私たちに接してきます。私たち介護従事者はその言葉をそのまま受け止めるのではなく、その言葉の裏に潜んでいる感情を知る必要があります。
特に私は相談員という立場でしたので、家族がどんな思いで要望を伝えてきていたのか、どうしても知っておく必要があると思い面談を設けました。
感情に対してケアをすることが本当の介護従事者だと私は思います。
まとめ
ご家族とのトラブルは非常に対応が難しく誰しもが嫌だと思うことでしょう。
しかし、嫌だからと言って受け身になってしまいますとトラブルが大きくなり、場合によってはクレーム、訴訟まで発展してしまう可能性がありますので注意が必要であるといえます。
こちらの方から積極的にかかわることによってトラブルを防止することが出来ますし、ご家族も納得してくれやすくなりますので、積極的に困っていることはないのか、要望はないのかなど働きかけることが大切であるといえます。