若者の血液が老化を防ぐ
ドラキュラとはアイルランド人の作家の小説「吸血鬼ドラキュラ」に登場する男性の吸血鬼。
血液は大昔より生命の源であると考えられていて、体内に取り入れることで自身の生命を保つドラキュラは、すでに若い血液に高齢者を若返らせる物質が含まれていることを示唆していたのかもしれません。
今回は未だ多くの謎を含んでいる血液が持つアンチエイジング効果についてお話ししたいと思います。
老若の血液が引き起こす現象
若い血液と老いた血液、それぞれがもたらす効能については、かつてよりその研究が進められています。
コーネル大学(アメリカ)の栄養学者クライブ・M・マッケイ博士は、1950年代にある実験によりそれを証明しました。若いラットと老いたラット、2匹のラットの側腹部を繋げ1個体とし(並体結合)、各々の血液を循環させます。そこから老いたラットの軟骨が若返るという結果を得ました。
2005年には、この並体結合を引き継いだスタンフォード大学(アメリカ)の神経医学のトーマス・A・ランドー教授により、老いたマウスの筋肉が若いマウスの筋肉と同じ速度で回復することが証明され、反対に若いマウスの筋肉は回復速度が衰えたことも発表しました。
その後も同様の実験により、老いた心臓が若返ることや記憶や学習能力を司る脳器官のひとつ海馬の活性化も実証されていて、血液に含まれる何らかの物質が老若の双方に影響を与えることが決定付けられたと言えます。
血液の売買、若返りビジネス
現代に至るまで、血液に代わる完全な液体(人口血液)は開発されておらず、人間の輸血には血液を使用するほか術はありません。1950年代、日本赤十字社により血液事業がはじまりました。現在の日本では、日本赤十字社が無償で血液の提供(献血)の全てを行っていて、輸血用の血液の確保を担っています。
一方では民間の商業血液事業も盛んになり、こちらは有償で血液を買い取るため、無償提供者は激減しました。有償で採血させることを「売血」と言い、血液銀行に預けることもでき、また必要な時に引き出すという「預血制度」が確立されました。
血液を売ることで対価を得る者が続出し、頻繁に売血している者の血液は血球が少ない「黄色い血」と呼ばれ、後に血液事業追放の対象とされました。
1964年、輸血用の血液は献血により確保するという「献血の推進について」が閣議で決定され、間もなく売血が輸血用血液に用いられなくなりました。そして1974年、民間血液現行による預血制度が廃止され、全ての輸血用血液は献血のものに替わり、後に売血も終焉を迎えました。
アメリカでは、スンタフォード大学で医学を学んだジェシー・カーマジンさんは、老化や健康寿命を研究する機関「National Institute on Aging(アメリカ国立老化研究所)」を経て、若者の血液を取り扱う会社「Ambrosia(アンブロージア)」を設立しました。
商材である血液は16~25歳の若い年代限定。35歳以上の被験者は8,000ドル(約85万円)を支払うことで、2日間に渡り1.5リットルの血液を獲得でき、病気が治るまでの保証は確認されていませんが、外見が若返ったり、筋力が増進したりなどの結果が得られています。
まとめ
血液のアンチエイジングに対する有益性には他の専門家からの反対の声もあり、「若返り」をエサに高齢者の購買意欲を煽っているとの批判もあります。
いかなる医療行為にも倫理観は不可欠であり、再生産される血液と言えども若者の一部を若返りや老化防止に使用するということは、生命のバランスが崩れることに直結するのではないでしょうか。
お金に困った若者が、お金持ちの高齢者に自身の血を売る。両者にとって関心の高い行為ではありますが、倫理観はどこか抜け落ち、資本主義の触手が体内にまで及んで来た感覚を覚えます。