緊急時の介護職員の対応で大切なことは?介護現場で使えるマニュアルも解説!緊急時に介護職にできること
介護の現場では、緊急時の対応は避けては通れません。
介護の現場では突然の利用者さんの体調の悪化、転倒などで骨折をしてしまう方、夜勤中のトラブルなど、様々な場合で緊急時の対応を求められます。また、高齢者の方は自覚症状がない方も多く、気が付いた時には手遅れだったということも十分起こりえます。
一人で介護をしている時などに、利用者さんの体調が急変してしまったら慌ててしまいますよね。でも、普段から緊急時に備えて準備をしておくと、いざという時に慌てなくてすみますよ。
介護職員が緊急時の対応で大切なこと
- 利用者の病気や既往歴を把握しておく
- 利用者の飲んでいる薬を知っておく
- 着替えや入浴の介助の時に痛がる様子や皮膚に異常がないかチェックしておく
- 普段の様子や生活(ADL)を把握しておく
- 緊急時の連絡先を確認しておく(施設内の連絡網・利用者のキーパーソン等の連絡先)
一人一人について、これら全てを把握しておくのはとても大変です。
利用者さんの情報はどこで確認すれば良いのか、情報ツールの場所は必ず把握しておきましょう。
利用者さんの病気や既往歴によっては、再発するリスクの高い病気がありますので、緊急時のシュミレーションをしておくと良いと思います。
利用者さんと接することの多い介護士だからこそ、いち早く急変に気づく場合もあります。
利用者さんと比べ、「おかしいな」と疑問に思うことがあれば医療スタッフに報告しましょう。
緊急時に介護職員が取るべき行動手順
前提として各施設ごとにこうした緊急時のフローチャート等が用意されていると思いますので、それらを事前に確認しておくと、いざという時に困らなくてすみますので確認してみましょう。
とはいえ、緊急時の一般的な流れは知っておきたいという方も多いでしょう。ここでは勤給対応の際どう動くべきかを順番に見ていきましょう。
まずは状況確認
現場に一人の時と複数スタッフがいる時では、対応も変わってきますよね。自分がどのように動いたら良いのか、優先順位を決めて動けると良いと思います。
現場に自分一人のとき
緊急時、現場にスタッフが自分一人の場合は、優先順位を決めて対応しましょう。
利用者の状態に合わせて、応急処置なのか、救急車を手配するのかを決めなければいけません。また、ご家族や施設等への連絡も併せて行います。
現場にスタッフが複数いる場合
その場の状況を把握し、優先順位を決めて、担当を決めます。
「あなたは連絡係をお願いします」や「あなたは救命係をお願いします」等、スムーズに決めることが重要です。
観察のポイント
人員の手配が終わったら、まずは利用者さんの意識の有無確認をしましょう。
「〇〇さん、聞こえていますか?」「〇〇さん、大丈夫ですか?」と声掛けとタッチを繰り返しながら反応を確認しましょう。どのようなことが利用者さんの体に起こっているのかは 分からないため、体を揺り動かして反応を確認するなどはNGです。肩を優しく叩くなどできる限り体に衝撃を与えないようにしてください。
その他にも
○バイタルはどうか(体温・血圧・呼吸・脈拍)
○顔色はどうか
○手足は動くのか、脱力感やしびれの有無
○痛む場所があるのか
等をしっかり確認するようにしてください。
これらを確認したうえで、意識がないなど緊急性が高いと判断した場合、救急車を呼ぶ必要があります。仮に意識があった場合でも下記のような状態ならば救急車を呼ぶべきです。
反対に意識があったとしても、ご自身の不調を前に利用者さんは不安を隠しきれないでしょう。その場合は介護職のあなたが「大丈夫ですよ」などと優しく声掛けをしましょう。
加えて利用者の急変時に慌てないためにも、どのようなことを観察したら良いのか、ポイントを押さえておきましょう。
○呼吸をすることが難しい状態ではないか
○頭痛や腹痛等安静にしている状態でも症状がなかなか落ち着かず、利用者さんが過去比較してもないような痛みがないか
○けいれん発作〔身が硬くなり、全身ががたがたと一定間隔けいれんすること〕していないか
○大量に出血していないか
○骨折していないか
ポイントを押さえておけば、その後の対応もスムーズに進みますよ。
119番に通報する
以下に119番に通報した時のざっくり流れを記します。参考にしてみてください。
- 119番に通報すると「火事ですか?救急ですか?」と問われます。ここでは落ち着いて「救急です」と答えましょう。
- 救急車に来てほしい住所を伝えましょう。施設勤務の場合はその施設の住所を伝えればOKです。
- 利用者さんの症状を伝えます。 誰が、どのようにして、どうなっているのかを簡潔に伝えてください。 さらに分かる範囲で意識、呼吸の有無等を 伝えてください。
一例
デイサービスの利用者さんである〇〇さんが、食事中突然胸を抑えて苦しいとおっしゃられました。顔は青ざめており呼吸も乱れています。 - 利用者さんの年齢、性別を答えましょう。
- 通報している貴方の名前と施設の電話番号を伝えましょう。大まかな流れとしては以上ですが、状況に応じてさらに詳しい説明や持病やかかりつけ医の情報を尋ねられる場合もありますが、わかる範囲で答えましょう。
救急車が来るまでに用意しておくといいもの
○保険証や診察券
○お薬(お薬手帳)
○お財布(お金)
これらの準備をしておき、救急隊が駆けつけてくれた際には以下のことを伝えましょう。
○利用者さんの体調が悪くなってから、救急隊が到着するまでの様子やその変化、おこなった応急手当。
さらに
○利用者さんの持病
○かかりつけの病院やクリニック
○普段飲んでいる薬
○医師の指示
○利用者さんのご家族の情報
※救急車がやってきても通報者は一緒に救急車には乗らないようにしましょう。救急車に乗った場合自力で帰らなければいけません。
さらに緊急時の対応後「事故報告書」というものを描く必要があります。これは転倒や事故が発生した場合に書くものです。面倒だと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、事故などは行政へ報告する必要があり重要な書類です。
事故報告書は国が定めた書式がありますのでそれに従って書いていくのですが、基本的には【いつ】【どこで】【だれ】【どのように】【なにをした】を意識して書いていきましょう。
緊急時の対応で介護職員がやってはいけない誤った対応
緊急時に推奨される行動があるのならば、やってはいけないことも当然存在しています。緊急時は気が動転してつい冷静な判断ができなくなるもの。ここでやっていけないことを改めて確認しておきましょう。
身体をむやみに動かす
利用者の体の状態がわからない状態で体を動かすことはやめましょう。特に利用者が骨を折っている、頭部を負傷している等の状況で体を動かすと悪化してしまう可能性があるので、施設の看護師や救助隊の指示を仰いだうえで、移動させる必要がある場合はしましょう。
介護職員の判断で薬を服用させる
利用者が持病を持っていることなどを把握していたとしても、独断で服薬をさせることはやめましょう。体調が急変している方に薬を飲ませる行為は医療行為に当たり、事故報告書を書かなければいけなくなります。自己判断での服薬は避けましょう。
緊急時が起きる前に普段からやるべきこと
とはいえ、緊急事態に対して完全に備えられていると自信をもって言えるという方は少ないでしょうし、多くの方は不安を感じながらお仕事をしているでしょう。
その不安を払拭するためには、事前の備えが大切です。ここでは普段からできることを紹介します
介護施設の対応マニュアルを確認する
多くの施設には緊急対応マニュアルが用意されています。まずそれを読み込むことから始めてみましょう。読んだ後は他職員と有事の際どのように動くのかなどの認識合わせをしておくのもよいでしょう。
AEDの場所を確認しておく
AED(自動体外式除細動器)とは、突然心配停止をして倒れた人に電気ショックを与えることで、倒れた人の命を救うための医療機器のことです。
高齢者のための介護・福祉施設などへ、AEDの設置が推奨されています。自分の働いている施設にAEDはあるのか、設置場所等、把握しておくと良いと思います。
AEDの使い方は簡単です。
電極を貼る位置や操作の仕方など、機械が教えてくれますので、誰でも扱うことができます。
ですが初めて使うときが緊急時では、慌ててしまってパニックになりそうですよね。
安心してスムーズに使うためには、事前に練習しておくことをおすすめします。
介護のセミナーや講習会に積極的に参加する
介護士向けのセミナーや講習会がたくさんありますので、いざというときに慌てないためにも、ムリのない範囲での参加をおすすめします。
施設内で緊急時の対応について勉強会を開催している施設もありますので、確認してみてください。
緊急時の対応も一度習ったからといって油断はできません。
利用者の命がかかった一大事になる可能性もあります。
その時々できちんと対応できるよう準備したいですね。
最後に
介護の現場では、いつ緊急時が発生するのか分かりません。
利用者さんが急変した場合など、介護士が第一発見者になる場合が多々あります。
緊急時に慌てないためにも、普段から利用者さんのことをよく把握しておきましょう。
落ち着いて行動できるように、普段から意識しておくことが大切です。