
介護イメージ
今回紹介するのは、特養に入所している95歳の女性(以下Bさん)です。Bさんは自分で歩くことができ、身の回りのこともある程度は自分で行うことができます。しかし、家庭の事情により特養に入所となった方です。
一見すると何の問題もないように見えるBさん、しかしとても面白い出来事が多くありました。その中でも特に印象的な出来事をいくつか紹介していきます。
気づかぬ間に・・・
入所して初日、Bさんは「トイレはどこですか」と聞いてきました。私はトイレの場所を教えると、Bさんは「ありがとうございます。」と深々とお辞儀をし、トイレに向かいました。
しばらくして別の入所者がトイレを利用しようと入ったら、「紙がない」と言ってきました。確認すると、トイレットペーパーが全て無くなっていました。調べてみると、Bさんが自分の部屋にトイレットペーパーを持って行っていました。
Bさんはそのことを覚えておらず、「何で私の部屋にこんなに紙あるんだ」と聞いてきました。
対処法
その後もBさんは何回か紙を持っていくことがあったので、トイレにはトイレットペーパーなど紙類を置かないようにしていきました。
Bさんがトイレを利用するときは、その都度職員が渡すようにしました。また他入居者がトイレを利用するとき用に、車椅子の後ろにトイレットペーパーを入れるようにしました。
他の人の部屋にて
別の日、夕食後の出来事です。Bさんは歯磨きを終え、「おやすみなさい。」と挨拶してから部屋に戻っていくのを確認しました。私は別の入居者の対応をしていたので、「大丈夫だろう」と考えていました。
しばらくしてからBさんの部屋を訪ねると、Bさんはいませんでした。ユニットを出た形跡がないので、各入居者の部屋を確認していくと、ある女性入居者の部屋にいました。
Bさんにどうしたのか尋ねると、「自分の部屋に誰かいるんだ」と仰っていました。私はその時、Bさんは「自分の部屋が分からなくなることがある」ということに気づきました。
職員間で相談し、Bさんの部屋の前に「Bさんの部屋」というプレートをつけることにしました。
主婦の本領発揮
そんなBさんですが、家事が大得意でした。食器を洗ったり、テーブルを拭いたりと、テキパキと行えます。
また他入居者さんと協力して、10人分の洗濯物を畳むこともできます。そうしている内に、他入居者さんとも仲良くなり、冗談を言って笑ったりする場面が多く見受けられました。
リンゴ大好き
数あるエピソードの中でも私が印象的だったのが、リンゴ狩りにいったときのことです。ある入居者のご家族がやっているリンゴ畑で、入居者の方達と一緒にリンゴを収穫することになりました。Bさんも参加し、せっせとリンゴをとっていました。
楽しい時間の中、「しゃくしゃく・・」と音が聞こえます。振り向くと、Bさんがリンゴを食べていました。Bさんは総入れ歯なので、リンゴは食べられないと思っていた私はビックリしました。
「歯痛くないの?」とBさんに聞くと、「痛くない、美味しい」と笑顔でリンゴを食べていました。
そんなBさんを見て、私は安心しました。とても素敵な笑顔だったので、写真を撮るとピースをしてくれたBさんでした。
まとめ
いかがでしょうか。Bさんの行動に、最初は戸惑うことが多かったです。しかし職員間で相談していく中で、「戸惑っているのはBさんも同じだ」という結論になり、Bさんが快適に施設で生活していくように、工夫していくことにしました。
そうしていく中で、Bさんも日々段々と落ち着いていきました。私はこの経験を通して、「認知症の症状だけに気をとられず、その人自身を見ることが大切だ」ということを実感しました。
行動を制限するだけでなく、「なぜBさんはその行動を取るのか」に着目することで、問題も解決するようになりました。この経験を今後の仕事にも活かしていきたいと思っています。